イシンホームの床暖房「床暖冬涼夏」をおすすめできる建物

2022年になって建物の断熱や気密性能が向上している中、イシンホームでは未だに暖房設備の床暖房を取り扱っています。当家ではこの床暖房を採用しておりますが、正規の使い方をする場合、広い平屋にはオススメできません。

今回は、この床暖房を採用しても大丈夫な建物環境についてお伝えします。

こんな方に見てほしい

イシンホームの床暖房を採用するか迷っている方

床暖房の電力消費量と電気代を知りたい方

床暖房の導入費用を確認したい方

最初に結論を言いますと、1階の床延面積の大きい建物ではオススメできません。また外気温が氷点下まで下がる地域でも導入はやめたほうが光熱費の削減につながります。

1階の床面積が23坪以上の住宅にはオススメできません。(放熱器が6台設置の場合)
床上面積16坪くらいのコンパクト住宅であればオススメできます。

目次

イシンホームの床暖房とは

イシンホームの床暖房「床暖冬涼夏(ゆかだんとうりょうか)」ですが、正確には床下暖房です。

イシンホームの床暖システムの導入費用は約65万円くらいします。(放熱器の台数で変動します)他社の床暖システムよりは安価な設定になっています。

床暖房を検討中の方はよく一条工務店の床暖房を思い浮かぶ方が多いのですが、一条工務店の床暖房とは仕組みが違います。

一条工務店の床暖房は、床の中に温水ホースが埋め込まれており床そのものが発熱するようになっているのですが、イシンホームは床下の基礎部分に放熱器を設置し、放熱器で床下空間を温めてから放射熱で床板を温め床に設置されたガラリから温かい熱気を放出する仕組みとなっています。温水はエコキュートと同じ原理で温められます。

出典:長府製作所

またこの床暖システムを採用する場合は、換気システムを必ずマーベックス製の澄家を採用する必要があります。マーベックス製の換気システムは床下に本体機器があって吸気した空気は床下に排出されるようになっているので、その仕組みを利用していて温かい空気を床と部屋空間へ送ることでシステムとして成り立っています。

出典:イシンホーム

以下の映像は2015年に製作された動画になります。映像では熱源が壁に設置されているようになっていますが、実際は1部屋の真ん中付近の床下に設置されます。

映像出典:イシンホーム公式チャンネル

イシンホームの床暖房に使用される設備

熱源機:長府製作所 RAY-4042X

イシンホームでは温水を温める室外機と放熱器ににエアコンを組み合わせた製品をセットにしています。エアコンの役割としては、床暖を稼動するまでに至らない時に暖房機器として、また夏場は冷房機器として使用することができます。

また床暖房稼動時は同時にエアコン暖房を行うことはできません。一応稼動することはできなくはありませんが、室外機で作られる熱源が分散してしまうので暖房効率が悪くなります。

出典:長府製作所

ちなみに一条工務店の床暖システムも長府製作所の熱源機を採用していますが、床を冷やす事もできるのでRAY-4043MCXを採用されています。

放熱器:サンポット UFN-200-1

出典:長府製作所(旧サンポット)

イシンホームでは基本的に2m幅の放熱器を採用しており、当家では6本の放熱器が設置されています。

※放熱器を製造しているサンポット社は、2022年4月に親会社である長府製作所に簡易合併された為、今後は故障等の不具合が発生した時は長府製作所にお問い合わせすることになります。

リモコン:長府製作所 CMR-2611

出典:長府製作所

イシンホームも一条工務店の床暖房も同じ長府製作所製の製品なので、リモコンが似ています。イシンが一条と違う点は、温める範囲を決められないことです。

青だんごむし家の床下暖房

当家の建物は平屋で広さは27.93坪になります。

設置図面

イシンホームで床下暖房を設置する際には、あらかじめ放熱器メーカーから建物に合わせて放熱器の設置図面を作成してもらえます。青だんごむし家の図面はこのようになっていました。

長細いものは放熱器、短いものは床ガラリ

熱源機(室外機)の設置場所付近にエアコンを設置する必要があるため、当家の場合は和室の押入れ上部にエアコンを設置するために室外機は玄関横に設置されています。

実際に設置された放熱器の場所

入居したのが丁度11月末ということもあり、すぐに稼動することになるわけですがすぐに違和感に気付きました。リビングは暖かいけど、主寝室が中々暖まらない問題です。

リモコンの設定温度を50度に設定し24時間稼動させていましたが、何故か主寝室だけが寒いという問題に直面しました。

表面温度を測定する機器で調べたところ、実際にはこのような感じに放熱器が配置されていました。

赤いのが放熱器・青枠がガラリ(通気口)・小さな青枠がイオン発生器付ガラリ

配置図面と比較するとよく分かるのですが、主寝室の放熱器の位置がドア付近に設置されており配置バランスの悪いことが分かります。

また放熱器が設置されていない玄関・浴室・洗面所・トイレ・廊下はやっぱり床が寒いです。この時に測定した室温ですが、外気温が-1度の時にリビングで22度で主寝室が14度です。

工務店経由で、どうしてこのようになったのかメーカーに問い合わせたところ、「床下の空気の流れを計算したらこのような配置になった」と言うわけです。

主寝室に関しては、誰がみてもわかるとおり、放熱器が床ガラリまで離れているためガラリ付近まで熱気が伝わらず主寝室の空間が寒い事が現状でした。

施主の希望で強制的に設置場所を移動

工務店はとりあえず様子をみてほしいといいますが、50度設定で数日観察してみても状況が変わらないようなので、こちら側の希望で放熱器の位置を変更してもらいました。

どのように変更したかというと 「ガラリに極力近づけてもらう」事です。

本来の床下空間を長い時間かけて暖めてからじんわり室内を暖めることはやめて、短時間でガラリから室内へ暖かい空気を送ることを優先しました。

部屋に設置された緑の放熱器だけガラリ(青枠)付近に移動してもらいました

結果的に、ダイニングのガラリから微弱ですが暖かい空気を感じることができました。

問題の主寝室も稼動して1時間もあれば暖かい空気がガラリから噴出してくるのが体感でき、24時間稼動した場合は室内の温度が21度くらいまで上がりキープできるようになりました。(リビングと同じ環境に)

しかし放熱器が近くにない場所のガラリは結局暖かくはならないので新鮮な空気が放出されているにしても無くても良かったのかなと思っています。

計画中の時から、費用を掛けてもあと2台放熱器をキッチンや廊下に追加したほうが温かかったと想像できます。

床暖冬涼夏の消費電力

当家はHEMSを設置していないので、正確な数字を確認することができません。このため、蓄電池のデータを参考にして消費電力で調べてみました。

常時(待機電力や換気システム、冷蔵庫等)の消費電力量は差し引いています。

当たり前ですが、リモコンの設定温度が高いほど消費電力が上がります。床暖の最大設定温度は50度です。モードは通常の他にエコモードがありますが、今回は通常モードの場合でお伝えします。

50度設定というのは温水の温度が50度なので、部屋が暖まってきたら手動で温度調整してあげる必要があります。

熱源がヒートポンプ式なので、時期によって消費電力量が違いました。

秋季と冬季の瞬間消費電力(目安)

上記は水温を温めるときに消費する電力ですが、エアコン暖房のように途中室外機内の霜取り運転を行うために一時的に温めを中断します。霜とり運転中は消費電力が下がります。

また熱源がヒートポンプ式なため、屋外の外気温が氷点下になるとパワーが低下し消費電力量と暖まり方も弱くなる事を確認しました。

設定温度秋季の瞬間消費電力冬季の瞬間消費電力
50度2.5kW2.0kW
48度2.4kW1.8kW
45度2.2kW1.6kW
40度1.8kW1.5kW
38度1.3kW1.2kW
35度0.8kW1.0kW
32度0.5kW0.7kW
26度0.3kW0.4kW

50度設定で24時間稼動したときの消費電力と室内温度

検証を2022年1月1日の0時から24時まで調査してみました。

左側は床暖のリモコンで右側は換気システムのリモコンになります。床暖の温度設定は最大の50度にしております。

右側は換気システムのリモコンで、屋外温度と床下の室内温度を確認できます。ただ屋外温度が2度くらいプラスの誤差を確認でき、室内温度も換気システム本体付近(洗面所の床下)にセンサーが設置されているために、あまり温度情報がアテになりません。

1日の消費電力グラフはこのようになりました

1月1日の全体消費量は53.3kWですが、床暖だけで計算すると大体41kWになりました。この日は前日の雪で太陽光パネルに雪が積もっているため発電がほとんどありません。

50度設定にしても常時高出力な消費になるわけでなく、大体1.3kW~1.9kW位の消費電力になっています。

2021年12月31日~2022年1月24日までの3週間だけ床暖房を稼動していましたので、日々の消費電力が以下サイトで確認できます。

屋外に設置している室外機の状態

室外機カバーが凍りついてしまっています。表面温度を測ってみると なんと-10度。

設定温度を可変した状態で4日間24時間稼動したときの消費電力と室内温度

毎日24時間50度での稼動では、消費電力がバカにならないので普段は時間を指定して設定温度調節しています。

 この床下リモコンには通常温度とセーフ温度というモードがあります。

つまり消費量の多い設定と低い設定と2つの温度が設定できます。

屋外温度が大体 -3度~7度位の4日間の消費電力と室内温度を調べてみました。

4日間設定した床暖温度プラン

通常温度:50度 >>> 3時~7時、16時~0時
セーフ温度:38度 >>> 0時~3時、7時~16時
在宅中は通常温度、不在中はセーフ温度にしました。

2022年1月19日~22日の消費電力グラフ

電気供給の色分けですが、
グレー:買電橙:太陽光発電緑:蓄電池

1月19日の消費:51.9kWh(床暖消費:約40kWh
1月20日の消費:45.0kWh(床暖消費:約33kWh

1月21日の消費:46.5kWh(床暖消費:約35kWh
1月22日の消費:50.3kWh(床暖消費:約37kWh

24時間50度で設定したときとたいした差がないように見えますが、外気温の影響をとても受けるので、寒い(氷点下)ほど出力パワーが落ちているようです。

快晴の1月22日は室内温度も確認してみました。

床暖房は乾燥しにくいと営業トークで言われたりしますが、実際は屋外が乾燥していれば室内も乾燥します。”エアコン暖房よりは乾燥しないだけ”です。

上の温度はリビング室温、下の温度は外気温です。

加湿器設定でいつもは消費電力の低い気化式で室内を加湿していますが、今回は消費電力の多いヒーター加湿で稼動してみました。温かいヒーターを使うので当たり前ですが結果的にいつもよりも加湿量が多くなり温度も2度くらい上がり、消費量も上がりました。

床下風エアコンの構築

イシンホームの床下暖房をそのままの状態で使用すると、とてつもなく電力消費量が掛かります。昨今の電気代高騰により、床暖の使用や導入に悩まれる方も多いと思います。

そんな中、イシンホームの床下暖房は、各部屋の床下に放熱器があることで、床下風エアコンを構築することができます。

放熱器が熱交換できるものと考えれば、各部屋の床下に風の出ないエアコンが設置されているとイメージしてください。

床下風エアコンを構築するために必要な条件

床下エアコンのような使い方をするには2つの条件が重要となってきます。

  • 放熱器をガラリ付近に配置する
  • 床下に一定量の空気を送り込む必要がある

床下に放熱器があるだけでは、ガラリから直接暖風を感じることは難しいので、床下に一定量の空気を送り込む必要が出てきます。

2023年12月に、ガラリにファンを直接施工する方法を考えましたので、できればこの方法が好ましいです。なお、それが難しい場合は、ガラリの形状に合ったタワー型のサーキュレーターを使用してください。

タワー型ファンを使用して、床下に向けてサーキュレーターを常時稼動し続けた状態で、24時間の室温を検証してみました。

32度設定にした時の室温

2023年12月26日の0時から32度設定で、24時まで測定しました。一番寒い朝7時の外気温1度の時点で、室温は18度以上を維持しています。

室温は低いですが、輻射熱の影響で床は暖かく、ガラリから温風も出てくるので体感温度も暖かく感じます。

1日の消費電力

無冷暖房時の消費電力は、平均で11kWhなので、差し引いた電力量が床暖の消費電力となり18kWhくらいです。

30度設定にした時の室温

32度設定の測定から2日後に検証しているため、室温の差がそんなにありませんが、消費電力量に違いがありました。

1日の消費電力

無冷暖房時の消費電力は、平均で11kWhなので、差し引いた電力量が床暖の消費電力となり14kWhくらいです。

床暖を50度設定にすると、消費電力が40kWhを超えますが30度設定にすると14kWh前後に抑える事ができます。

ただし正規の床下エアコンと比べると、やはり消費電力は掛かってしまいますが、暖風のおかげで室温が温かくなりやすいことを確認しました。

まとめ

外気温や建物の断熱性能によって差はありますが、当家の環境では冬期24時間50度設定で1日あたりの消費量40kWhで、2つの温度設定を変えたなら35kWくらいの電力消費量になりました。

秋期の稼動なら1日50度設定で消費量45kWhくらいになります。

1ヶ月間、イシンホームの床下暖房を中心に使用していて思ったこと

  • イシンホームの床下暖房は温暖な地域に向いている。北海道や東北、日本海側、夜間氷点下になるような地域では暖まり方にムラがあるので採用しないほうが無難
  • 50度設定で2週間24時間稼動しても、放熱器の位置によっては各部屋の温まり方にムラがあり、消費電力も1日あたり40kW以上と高いのでコスト重視なら導入しないほうが無難。
  • 単純計算で1日40kWhの床暖×30日=1200kWh消費(1kw=30円なら36,000円の暖房費)なので電気代がヤバイ。
  • 冷え性で床を温めるだけでいいなら、床暖の設定温度を35度にしてあとはヒーター加湿で部屋を暖めたほうが消費電力が総合的に安い。
  • 今の放熱器6台から更に2台追加設置(主寝室・廊下)すればムラなく温まりやすかったかもしれない。
  • 床下暖房より壁掛けエアコンを使ったほうが圧倒的に消費電力が低くスピード暖房できる。
  • 電気代掛かってもとにかく足元から暖かくなりたい人には向いている。

床下風エアコンを構築すれば、上記の問題を解決する可能性があります。

イシンホームが販売している床下暖房を稼動検証して分かったこと

しかしながら、正規の方法で床暖を使用する場合は、

放熱器1本で6帖程度の部屋しか暖められないことです。

当家では、6帖リビングに放熱器が2本あるため、リビングだけは非常に温かいです。

北側の5.8帖のお部屋も比較的暖かいのですが、放熱器の配置バランスが悪い9.5帖の主寝室は正直に寒いです。11.8帖のダイニングキッチン部分も放熱器が1台しか設置されていないので寒いです。洗面所や廊下、玄関ホールには放熱器がないので全館空調とはいえ床は暖かくないのが現状でした。

イシンホームの床下暖房「床暖冬涼夏」を採用しても大丈夫な建物は、放熱器6台設置で1階の面積が23坪未満の建物です。放熱器1台で6帖の部屋までなら暖まりますが、それ以上の広さのお部屋なら2本以上設置されることをオススメします。

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